昨日、感情体験の豊かな人は人への察しがよいと書き
ましたが、人は何から何まで体験できるものではありません
退学、留年、失恋、別離、倒産、失業、病気、不和などを
思いつくままに体験するわけにはいかないのです
しかし、できれば人生で一度は体験した方がよいのは
「愛情の苦労」「金銭の苦労」「時間の苦労」といわれます
継母に育てられて気兼ねしたとか、姑とのやりとりで
苦労したなど、愛情関係で考えることの多かった人は、
人の気持ちへの察しがよいようです
部下とか子どもとのつきあいの苦労を乗り越えた人も
同様に人の気持ちへの察しがよいのです
金銭的に苦労した人も、人に頭を下げたり人の情に
すがったりせざるを得ないので、人の事情を考慮する
くせが身につきます
しかし、裕福な人は人に嫌われても食うに困らないから、
相手の事情にさほど気を遣わず、自分の都合を優先
しがちです
時間のやりくりで苦労した人は、人の時間への配慮があります
「今、五分ほど電話で話してもよいですか」と確認する、
約束の時間には切り上げるなど、人の事情への理解があるのです
一般的には、これらの三つのいずれかで苦労した人は、
三つのこと以外のことについても配慮が行き届く率が
高いそうです
しかし運悪く、愛情の苦労も、金銭の苦労も、時間の苦労も
しないで今日まで来た人もいるでしょう
そういう人には、日常生活の耳学問による間接体験を
お勧めします
両親健在の人は、幼少期に親を失った人にその後どんな
思いで人生を過ごしてきたか、高齢の親をかかえている
人にはどんな苦労があるか、多忙な人はどのように時間を
使っているかなど、機会あるごとにヒアリングするのです
ところが、世の中には自分のことばかり話して、人には
「お宅のお子さんたちはいかがですか」「定年退職の
心境はどんなものですか」と質問しない人が意外に多いのです
小学校教員は高校教員に「高校ではどうですか」と問い、
公務員は会社員に「企業ではこういう問題にはどう対処
していますか」と問うていれば、耳学問ができるのです
こういう間接経験をした人は「視野が広がった」といいます
以前は、特定の視点でものごとを見ていたが、今は複数の
視点からものを考えられるようになったということです
まとめると、人生の苦労は人の感度をよくしてくれる薬で
あり、人生体験で無駄なことはなにもないということでしょう
ただし、その体験を自分なりに乗り越えておかないと、
いつまでもそのことに引っかかり、人の事情を察する
だけの余裕が出てこなくなります
そういう人は、たえず思いをこらして過去の苦境をプラスに
換算するよう試みることが必要です